園だより2月号「巻頭言」より | - 2019/01/25
- 言葉が飛び交うための時間と場所
「人類を増やすためだよ」
ご存じの通り、昨年春から一年間、映画制作のためにプロのカメラが入っていますが、仮のタイトルは「こども会議」です。そこで定期的に年長さん中心にミーティングをやっています。先日1月15日のミーティング。この言葉は、柿澤先生の「なんで(なんのために)生まれてきたと思う?」という投げかけに対して出てきました。すいすいの男の子です。どこから、そういう発想がくるのか、どんな体験が彼にそんな考えを導き出すのか、それまでの成り行きを知りたくなります。
こども会議のテーマは、生まれること、家族、子育て、生きる、死ぬ、ルール、友だち、気持ち、自然・科学、不思議な行動の理由、もっと楽しい園にするにはどうしたらいい?など、オールジャンルで垣根はありません。こうお伝えすると、こんなことまで語り合ったりできるのかと思われるかもしれませんが、結構、子どもたちはすごいです。
友だちの話を聞いて、ほかの友だちが話し出す。その話から「自分も」と、また言いたいことが噴き出してきます。テーマによっては、何人もが言わずにはいられない、とばかりに盛り上がるようです。
その様子を聞いていると、ここにも子どもたちの「再現」があるんだなと気づきます。何度か巻頭言でお伝えしていますが、人間というは、体験したことをもう一度味わいたいから、それを目の前にもう一回露わにしたい、という衝動に動かされています。これを「リ・プレゼンテーション」(再演、再現)といいます。一般には「模倣している」といういい方になっているのですが、実は、ごっこ遊びだけではなく、言葉も同じ。このような抽象的なテーマでも、自分の中に抱え込んでいる記憶やイメージが言葉になって、ポップコーンのように弾けて飛び出してくるんですね。
ということは、先に再現したくなるような体験が豊かなほどいい。「人類を増やすため」なんて知識を得た体験は、もっとほかの知識とつながっているはずです。地球、動物、人間。好奇心を掻き立てる知識が、いっぱいつながっていそうです。そして、その一方で聞くこと、話すことにも、豊かな環境が必要だということが、よくわかりました。話しやすい場所、語りを保障した空間、これから自由に言い合って、言葉を寄り添わせ合っていいんだよという、時間と場所です。これは目に見えないゾーンですが、そういう機会もきちんと保障してあげたいと思いました。
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