乳幼児の世界
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手
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人間の手はいったいどんな役目、役割をしているのでしょうか。手はどこから進化しどんな形で現在の手となったのでしょう。まず手から話す前に人類の歴史からお話ししましょう。
人間の祖先はいったいどんな経路を辿って進化してきたのでしょう。
バクテリアの時代、海の時代、魚類の時代、両生類の時代、哺乳類の時代、人類の時代、のようになります。
植物には動きがありませんが動物は移動することが出来ます。植物は地に根を出してその環境に適した状況に少しづつ少しづつ変化してきました。動物も同じ様に環境によって変化してきたのです。いや、変化している状態が現在もつきることなく続くと思います。哺乳類の出現は、人類にとって欠くことの出来ないことでした。哺乳類無くして人類の出現はあり得ません。 ヒトデ、貝など海の生物の時代は生物の行動半径はきわめて狭くそのため環境による進化はあまりみられませんでした。魚類の時代になりますと、行動半径が広くなり海中に適した魚類から徐々に陸上にあがり、海と陸上の両方で生活できる動物が現れ、しだいにその環境に合った哺乳類が出現しました。哺乳類は環境を的確にとらえ常に進化の道を辿り人類の出現がなされました。 前にも述べましたが、行動範囲が広くなればなるほど進化が進み、その環境に適した動物が出現してきます。
サルから進化した人類
哺乳類は、いろいろな枝にわかれて適応拡散していますが、そのうちの1枝が、実はサルなのです。サルという動物はあまり目立たない生活に入り込んだものです。他の動物の場合、例えばキリンは非常に首が長い(特殊化)し、ウマは走ることの達人です。キリンは首が長いので高い木の葉は食べやすいが地面にある物は食べづらい。また、ウマのからだというものは、走るのに適した体つきになっているのです。一般の哺乳類は、それぞれ特徴があります。 特に、原始的なサルはどうでしょう。きわだった特徴はありません。それはあまり特殊化していないからです。ある環境に対して特殊化しますと、その場では大変うまく生き延びることが出来ます。しかし環境は、必ずいつも同じ状態であるとは言えません。ところが非特殊化動物は、その環境には特に合っていなくても、次の環境には、また生き延びることが出来る訳です。 サルは森や林に住み人類へと進化しました。ではどうしてサルが森や林に住み着いたのでしょう。 それは下記のような事が考えられます。
1.森には他(草原、砂漠、平原)に比べて食物がたくさんあります。木の実、木の皮、葉、鳥の卵など贅沢をしなければ十分生活出来ます。食べ物が豊富と言うことは動物にとりまして大変具合の良いところです。
2.外敵から身を隠すのに最適な所。自分より強い動物に襲われた場合、木の影に隠れたり、草むらに身をひそめれば外敵から身を守ることができます。
3.木に登ることを覚えた、つまり木に登るには爪で木の皮をひっかけて登るか、木の枝をつかんで登るかのどちらかです。
つまりサルは自然にうまく順応した生活の知恵を発揮して自然を友達のように自然の中にとけこんでいったのです。つまり木に登ることよりも手を使うことを覚えたのです。
図
手のできるまで
魚の動きを見ますと、身体全体を使って尾を左右に動かして水中を泳ぐのです。魚は尾びれを降ることによって前進しているのです。尾びれを振るということはどんなことなのでしょう。魚の胴体の筋肉を左右に動かすことです。魚には背びれ、尾びれ、胸びれ、腹びれがありこのヒレによって前後左右、上下のコントロールをしているのです。つまり、前進運動器にも二つ種類がありまして主前進運動器、副前進運動器に別れる訳です。魚の場合主前進運動器は胴、副前進運動器が背びれ、尾びれ、胸びれ、腹びれにあたります。 そして陸上に出ますと、トカゲなどは手足が付いていて魚のように背びれ、尾びれ、腹びれがありません。これは手・足を左右交互に出して進みます。つまり赤ちゃんのハイハイによく似た歩き方をします。さらに主前進運動器が手足にかわり、胴体が副前進運動器となったわけです。手と足はよく似た動きをしておりますが、両者は異なった動きをしています。それは、前足が地面を引き寄せる役、後ろ足は蹴る役をはたしているということです。このことは、人間に置いても同じです。というのは前足というのは、曲げる力の方が大きいのです。人間の手も、握る力のほうが強く、後ろ足は曲げる力より伸ばす力のほうが強いのです。 次の段階が哺乳類です。哺乳類は四肢が著しく大きくなってきます。それと同じにこの四肢は前後に動かします。これで前進運動をする訳です。哺乳類の段階になりますと、前進運動は分業の一つになり主として四肢がこれにあたります。体の中には、その際働かないものもいろいろあります。つまり私達の身体も分業が進んで、足が前進運動で、手は前進運動の役目を失ってきています。
道具を使う手
道具を使うには手が使えなくてはなりません。手を使うには、親指が大きく影響している訳です。リスなどは物を持って食べることは出来ますが、手を使って物を使うと言うことは出来ないのです。しかしサルに関しては手で物を持って食べることは出来る。また手の届かない所では、棒などを使って食物などを取ることが出来ます。と云うことはサルに関しては道具を使うことが出来ます。
道具を作る手
石器時代の人類は石で石器を作りました。その石器で鳥や獲物を狩猟したわけです。しかし、石器は硬くその石器を作るために、石でその石器を作りました。つまり道具を作るために道具を用いたのです。これらの道具・製作は手がやりのけたのです。そして現在では道具が道具を作る時代へと人類は進歩しました。しかし手が自由に使えたら道具が作れるかと言われても、そうではないと思います。手と脳のかかわりも大切な関係にあります。
人間の手のしくみとはたらき
● 骨の発達
手の骨は関節でつながり、筋肉が伸び縮みして指を曲げ伸ばしできるようになっています。手の骨は図のように8個の手根骨、これと隣接した2個の長骨5個の中手骨と14個の指骨からできています。
図
このうち手根骨は誕生時からありますが、これは軟骨でレントゲンの映像には映りません。この軟骨は年令が進むにつれ骨に変わって(骨化)いくのです。
● 感覚器官
昔から主な感覚には5種類あるといわれている。視覚、聴覚、触覚、味覚、臭覚このうち手に関わりのあるのは触覚である。しかし皮膚に関する感覚はこれだけではない、手の皮膚は手を包んで内部を保護しているだけではなく、外環境との接触面となっていて外環境の変化を受け止めるための受容器の種類がたくさんあります。 手の感覚だけで5種類あります。
1.皮膚感覚 物の表面のざらざら、すべすべ、なめらかさ
2.温度感覚 熱い、ぬるい、冷たい、暖かい
3.圧感覚 軽い、重い
4.痛み感覚 痛い
5.運動感覚(第6感)触覚と筋肉感覚の同時的な助けによって、実際の物に手で触って物体を知覚する。
手が探索に有用な器官であるなら、身体のどの部分より、機械的刺激に敏感である。
表1.一見しておわかりのように指先がもっとも敏感な場所で、顔、足の順になります。
表2.細い棒で圧迫を加えたときの力で値を表しています。圧に最も敏感なのは顔面、腹部背中、肩、次が指になります。
指は触覚には敏感であるが、圧覚には鈍いことがおわかりになりましたでしょうか。
幼児が成長の過程で感覚刺激が与えられないと、正常な機能の発達が阻害されることがよくあります。よく知られているのは、視覚系で生後しばらく物が見えない状態が続くと、例え視覚系が正常でも失明してしまいます。生まれてから人で5年、サルで1年半、猫で4,5日がこの失明のおこる限界で、これより以前にものがみえない状態が続くと失明してしまいます。また哺乳類で授乳期に母と子の社会的接触を断ったり、子供だけを隔離して育てたりすると、正常な脳と行動の発達がそこなわれて首を一定方向へ振りつづけたり、身体を揺すり続けたり、指や手をかんだり、しゃぶったりして、異常な行動がおこったりします。以上のように感覚器官が育つ時に、感覚器官を必要に応じて刺激しないとその感覚が麻痺してしまい、しいては正常な感覚器官が育っていきません。