【金田我天 プロフィール】
小学校の元教師でこども園園長暦は20年。出版社で絵本の編集にも長く携わってきた。
現在、園長を続ける傍ら保母さんや保父さんになる学生たちの専門学校で保育原理を、看護学校で教育学の教鞭をとっている。
[ | | さ | | | | | | ら・わ | 人物 ]
「 視診 」
体の異常は、その全身状態を観察することでおおかた察知できる。この観点からの幼児の観察を視診と呼んでいる。自分から体の異常を保育者や親などに伝えようとしない幼児にたいしてこの視診は重要で、特に登園時の視診は必ず行なう必要がある。
親はとかく自分勝手の判断(私信)で、子供の病気を決めつけてしまうことが多い。
「 4月2日生まれ 」
「年齢計算ニ関スル法律」によれば、出生日の前日をもって満1年とされる。したがって、4月2日生まれで6歳となる子どもは、法的年齢計算では、年度がかわる4月1日に満6歳に達していることになり、その年度で1番早く生まれた子どもとして就学することになる。
わかりにくいが、すなわち法律で満1歳になったお祝は誕生日の前日にするのが本当らしい。本当の満1歳は、前日ではなく当日の出生時刻だと思うが。
「 自校方式・センター方式 」
給食の方式で、おもに学校給食において使われるが、保育施設でも使われる。それぞれの施設の給食室で調理するものを自校方式、複数の施設の給食を、共同調理場で作り配送するものをセンター方式という。また、83年の行政改革の最終答申以来、学校では自校、センター方式のいかんにかかわらず、給食業務の一部、あるいは全部を民間業者に請け負ってもらう「民間委託」が増えてきた。最近こども園などにもこのような方式が見られるようになった。
自家方式がほとんどだった家庭において、センター方式(宅配)や、民間委託(出前、外食)が増えてきたのは、行革での給食の経費節減と違って、時間節減(家庭労働時間節減)からきてるらしい。
「 しつけバシ 」
箸の持ち方を子供に教えることができない親が増加していることから、正しい箸の持ち方ができるようにと、リングとフックを中ほどに付けた、業者が考え出した箸の名称。これが有効かどうかは不明。
しつけにとって大切なことは、親(保育者)の後ろ姿をみて子供が育つことであることを忘れている人をしつけてほしいなあ。
「 私的児 」
認可保育所で、公的な機関を通さず、園長との私的な契約のもとに入園している園児のことで、措置児との反対語。
かつて、私的児は園にとって「素敵児」に見えたが、子供の数の激減で、この言葉は「死語の世界」になりつつある。
「 児童福祉法・児童憲章・児童権利宣言 」
第二次大戦後、子どもたちの自由と開放を目ざして、これら3つが制定された。新憲法が制定された1946年の翌年、この憲法の精神を踏まえて制定されたのが「児童福祉法」。さらに、児童福祉に対する国民の意識を啓発するために、1951年5月「児童憲章」。また、国際連合において、1948年の世界人権宣言を踏まえ、1959年に制定されたのが「児童権利宣言」である。1979年の国際児童年は、児童権利宣言の20周年を記念して定められた。
年号を覚えるのは、中学や高校時代の歴史を思い出して、見ただけでぞっとする人もいるだろう。しかし、その背景を知っていることは、保育者としての教養である。
「 自由保育 」
子供達の自主性、創造性、個人の行動の自由を重んじ、それを保証しようとする保育。
この言葉は、しばしばひとつの保育形態として、「一斉保育」の対比語として使われたり、「設定保育」の対比語として使われたり、子供の好き勝手にさせる保育、いわば、何もしないほったらかしの保育としての悪口として使われたりと、その性格は、自由に変化する。
「 食器 」
給食用食器は長い間、安い、軽い、壊れにくいという理由から、アルマイトが使われてきた。しかし、食器が熱くなって犬食いになる、見た目が良くないという理由から、78年から82年にかけて、ポリプロピレンの容器にかわった。だが、そのポリプロピレンも酸化防止剤のBHTなどの有害物質が溶け出すということで、87年ごろからメラミン樹脂の食器が導入されるようになった。しかし、最近では、メラミン樹脂の食器は、60℃の湯や酢につけると、有害なメラミンとホルムアルデヒドが溶けて出てくるということで、陶器や磁器の食器が導入され始めている。
給食用食器が陶器や磁器になると、はじめにアルマイトが使われていた理由とすべて逆になる。安い→高い、軽い→重い、壊れにくい→壊れやすい。はじめの理由は、いったい何だったのだろう?
「 出生率 」
その地域における1年間の出生数をその年の人口で割って、人口1000人について何人生れたかを示すこと。昭和60年に12.0である。死産数を含んだものは、出産率。しかし最近では、この数値よりも、合成特殊出生率(一人の女性が一生の間に産む子供の数の平均)が1.53になったことが話題になる。
これを「しゅっしょうりつ」と読み、礼拝を「らいはい」と読むのはおばんで、「しゅっせいりつ」と読み、「れいはい」と読めばギャルである。
「 少子化 」
終戦後、少産少死の傾向が強まり、「少なく産んでよく育てる」という標語も作られ、少子化が進む。
少死が、少子をもたらすのはわかるが、「産め」だの「産むな」だの、また最近「産め」だのって、笑止(しょうし)千万。
「 情操教育 」
真理、道徳、芸術、宗教などを愛するような知的に養われた高度の感情の発達を誘導する教育。
一般に、ピアノや絵を習わせたり、動植物を飼育栽培させることが情操教育であると考えられているが、いやいやさせていると情操はどんどん壊れていく。
「 小児成人病 」
動脈硬化、糖尿病、高血圧症など、中年から老年にかけて頻発する成人病が、小児にも見られるようになり、そうした病気をさして言う。
最近は、チョコやあんこよりも、酒の肴のようなものが好きな子が多くなったかわりに、いつまでも漫画を読む大人が増えた。
「 初語異変 」
初語とは、赤ちゃんが最初に意味ある単語をしゃべり出して(始語)から、しばらくの間発生する言葉を意味し、従来はウマウマ、ブーブーなど母親から教えられた言葉が圧倒的に多かったが、最近は、テレビなどの影響で子供の初語の種類が変わってきている。
初語とは、乳幼児がどこから1番影響を受けているかをはかる目安である。母親か、父親か、保育者か、テレビか。最近の乳幼児は、泣くときに、「おとうさーん」と呼ぶことが多い。
「 心理劇 」
精神療法に用いられる方法で、役割りを演技することによって、無意識に持っている心理的なコンプレックスや葛藤を表出させ、それを解消したり、自分の相手側を演じることによって相手の立場を理解するのに用いる。
ままごとでおかさん役をやっている我が子が、子供役の子に、「早くしなさい。何をぐずぐずしているの!」なんてどなっているのを聞いて、いつもこんな言い方をしているかとハッとすることがあるのは、まさにこの治療法の原点である。
「 スキンシップ 」
スキン(皮膚)と、シップ(関係)の意味で、肌の触れ合いを強調した言葉である。子供にたいしてのスキンシップは、方法は年代によって異なるが、思春期にはいるまで必要である。欧米では、主に、抱擁、キッスで、日本では添い寝、おんぶが代表であった。
最近の若い人は、恋人同志や夫婦のスキンシップが増えた分、子供とのスキンシップが少なくなってきている。恋人や、夫や妻の情緒を安定させることのほうが、自分にふりかかるという点では必要なのかも……。
「 スリー・アールズ 」
「読み」reading「書き」writing「算」arithmeticの3語に共通して含まれる「r」を取っての略称。ヨーロッパ中世の都市における商業の発展とともに、庶民階級に最低限必要な教育として、これら3つの要素が求められた。日本では、江戸時代「読み」「書き」「そろばん」として、町人の実生活での必要性からこれら3つが求められた。
”スリー・アールズ”は、幼児期に必要ないと思う人がいるが、そんなことはない。子どもは、いたずら「書き」をしたとき、親の顔色を「読み」、どのくらい怒られるか「計算」する必要がある。
「 設定保育 」
保育者が一定の指導目標をもって子供の活動を計画し、設定して行なう保育の方法。
この保育は、保育者の指導意図が優先するものであるのに、保育者自身が優先する保育と思っていることが多い。いわば自己中心保育と思っている人がいる。
「 早期教育 」
発達の遅れをできる限り早期に発見し、早期に適切な指導がされることが望ましいという観点から行なわれる教育のこと。したがって、主として、乳幼児期に様々な経験が与えられることが有効とされる。
必死になって、乳幼児期から早期教育と称して、英語などを教え込もうとしている母親は、我が子に発達の遅れがあると思っているのかも。
「 素材 」
表現活動を行なうために、そのもととなる材料、自然物、文化的遺産、人間の行動や感情などを総括して素材と呼んでいる。
要するに、子供を保育、教育するための素材は、身の回りのもの全てといえる。たとえ、良くない保育者も、良き素材だけにはなりうるのかもしれない。
[ | | さ | | | | | | ら・わ | 人物 ]